2019年に行われる大統領選挙はなぜ大切なのか

有名なアメリカ人の政治学者、サミュエル・ハンティントンは1970年代に起こった、南ヨーロッパとラテンアメリカの国々をファシズム体制及び軍事政権から解放した民主化の「第3の波」について研究していた時に、「2回連続の政権交代の挑戦」について書いた。

  民主化の「第4の波」は共産主義が崩壊したことで1990年代に始まり、主にバルチックと東ヨーロッパの国々に広がった。その一方で、旧ソ連の一部だった15カ国のうちにほどんどが権威主義体制に戻ってしまった。しかし、ウクライナとグルジアは例外だった。2003-2004年にバラ革命とオレンジ革命が起こったため、民主主義への進歩が著しかった。その後、ウクライナにおける民主主義の発展はヤヌコヴィッチ政権の時に停止してしまった。当時のウクライナはフリーダム・ハウスによって「部分的に自由」と評価された(クチマ政権の時代と同様)。

  オレンジ革命から丁度10年が経った時点で起こったユーロマイダンと「威厳の革命」ゆえに、ウクライナは民主主義の新局面を迎えた。また、2014年の大統領・議員選挙には広義での親ヨーロッパ派が勝利を収めた。加えて、議会の5つの院内会派がいわゆる「新ヨーロッパの多数派」を形成した。4年前と比較してみると、その議員数は293人の国会議員に過ぎなかった。

 しかし、全ての5つの院内会派がウクライナのヨーロッパ連合協定向けの革新に満場一致で賛成しているとは断言できない。VoxUkraineというウクライナ独立分析機関の調査によると、議会における革新的な法律への賛成率が一番高い政党は「人民戦線党」と「ペトロ・ポロシェンコ・ブロック」だとされる。党首がリヴィウ市長のサドヴィー・アンドリーであり、ウクライナの最も革新的だと呼ばれる「自助党」の派閥は第3位を占めている。人民主義の「急進党」と「祖国党」は第4位と第5位になった。
  「民主同盟党」や「ペトロ・ポロシェンコ・ブロック」と同様に「祖国党」は中道右派の「欧州人民党」にオブザーバー参加者として入っている。しかし、VoxUkraineによる調査から「祖国党」が現役の議会での革新的な法律の半分にしか賛成していないことがわかった。つまり、ティモシェンコ・ユリアは「人民戦線党」の党首のヤツェニュク・アルセニー、または革新への賛成率が最も高い217人の議員からなる派閥の党首であるポロシェンコ氏ほど革新者の役割にふさわしくないということだ。

  世論調査によると、ウクライナの投票者は次の大統領・議員選挙に出馬する候補者をすでに知っている。ティモシェンコ氏はポロシェンコ氏と同時に1990年代の後半に政治の世界に入った。彼らは4年前の大統領選挙で戦っていた。また、来年の大統領選挙の第2ラウンドで改めて戦うことになる。グリチェンコ・アナトリーは今回でティモシェンコと同じように3回目の大統領選挙に出馬する。彼は以前は「祖国党」の一員として議員選挙に当選したことがある。他の候補者の中にはコメディアンやロックスター、不評を買った「地域党」の代表者等もいる。

  新しい候補者が出馬しないことに加え、他にもっと重大な問題が2つある。

  第一は、各候補者の選挙綱領の不十分さである。全ての立候補者予定者はポロシェンコ大統領を非難しているが、VoxUkraineの分析によると、その非難は大げさや未確認情報に基づいたものである。各立候補者がポロシェンコ氏に対抗しているものの、当選しても、現実できる公約は提案されていない。

投票者はティモシェンコ氏、グリチェンコ氏、リャシコ氏に次のポイントについて聞くべきだ。

1.ウクライナ東部の戦争をどのように終わらせるか?特にドンバス紛争の現場に行ったことのないティモシェンコ氏とグリチェンコ氏に聞くべきだ。

2.汚職をどのように取り締まるか?

3.より甚だしい経済発展と失業率軽減はどのように確保できるか?

今のところ、ティモシェンコ氏、グリチェンコ氏、リャシコ氏は既に存在している解決方法よりいい提案を出したことがない。

政治家はよく嘘をつくことからウクライナ人の投票者が彼らを信用できないことは当然であろう。VoxUkraineによるウクライナ政治家のトップ嘘つきリストにはティモシェンコ氏が第1位を占めている。第2位はラビノヴィッチ氏、第3位はボイコ氏である。

  第二に、候補者がウクライナには半大統領制ではなく、大統領制が機能しているかのように行動している。ポロシェンコ大統領は最高議会や政府を誘導できることは相違ない。なぜなら、現大統領は最も大きい派閥を持っており、二番目に大きい派閥と協力しているからである。

  ポロシェンコ大統領に対抗している候補者の中で正式な政党に近い政治権力を持っているのはティモシェンコ氏だけだ。ただし、ティモシェンコ氏が大統領になった際には、議会選挙までの6カ月間に20人の議員にしかサポートしてもらえない。さらに、2019年10月の議会選挙後に「祖国党」が現在「ペトロ・ポロシェンコ・ブロック」や「人民戦線党」に入っている217人の議員に協力してもらうわけがない。自分を支持する政府を形成できないなら、どうやって国を治めるのか?そこが問題だ。ティモシェンコ氏の人気の絶頂は2006年と2007年の選挙にあたる。当時に「ユリア・ティモシェンコ・ブロック」が22%と31%の投票をそれぞれ得た。

  世界中の投票者は「人民主義者が大好き」と「人民主義者が大嫌い」にはっきり分けられている。中庸はない。そのため、人民主義者にとっては支持者を開拓することは難しい。2010年の選挙にはティモシェンコ氏が投票の45%を得た。その理由は、多くのウクライナ人はヤヌコヴィッチに反抗して、ティモシェンコ氏に投票したからだ。2004年の選挙での投票数がユシチェンコ氏より300万少なかったティモシェンコ氏は当選しなかった。ちなみに、その残りの300万の投票を第一目のラウンドで得たのはヤツェニュク氏とチギプコ氏だった。2014年に冤罪により2年間刑務所で服役したティモシェンコ氏への投票は全体の13%に過ぎなかった。

  グリチェンコ氏が党首を務めている政党は経済的資源と人的資源が限られており、なおかつバーチャル政党である。リャシコ氏のバーチャル政党の場合、資産家への債務に拘束されている。この二人は何らかの解決策の提案があっても(あるわけがないが)、大統領として実施することは想像しがたい。歌手のヴァカルチュック

・スヴャトスラブについて言うと、政治権力は全くない。

  「野党ブロック」の代表者であるラビノヴィッチ氏やボイコ氏が当選する確率は非常に低い。万が一、この二人のうち、だれか当選したら、ウクライナの政治的安定に悲劇的な変化が訪れる。なぜなら、反ロシア戦争の復員軍人と国民主義者は反大統領活動を起こすからだ。

  ウクライナは7か月後にハンティントン氏が提唱した「2回連続の政権交代」に挑戦する。もし、今回の選挙結果が2014年と変わらないものだったら、ウクライナはこれから5年間にわたって新しい革新を導入したり、汚職を取り締まったり、ヨーロッパ並みの発展を目指したりできる。もしそうなったら、ウクライナは2024年の選挙までに旧ソ連の思考を捨て、新しい国として将来を迎えられるだろう。



コメントを残す